全国高等学校長協会家庭部会 理事長
埼玉県立不動岡高等学校長

武正 章

 日頃より全国高等学校長協会家庭部会の活動に御理解・御協力を賜り感謝申し上げます。
 本部会は、高等学校家庭科教育の振興を図ることを目的として昭和26年に発足いたしました。発足以来今日までの間に、少子高齢化、グローバル化、ICT・AIなどの進歩、社会構造や生活様式、人々の価値観、親子関係等をはじめとして、生徒を取り巻く環境は大きく変わりました。また、それら社会や産業構造等の変化に伴い、社会や企業が求める力も大きく変化しております。変化の激しい、予測の困難な社会において、一人一人が高い志を持ち、自立して生きるために必要な基盤を確実に育み、国の内外を問わずさまざまな分野で活躍し、社会に貢献する力を高等学校教育の中で育成することが求められております。
 

○学習指導要領の改訂について
 共通教科及び専門教科「家庭」それぞれの改訂のポイント等をまとめてみますと、次のようになっています。
 1 共通教科
 共通教科「家庭」では、実践的・体験的な学習活動を通して、よりよい社会の構築に向け、家庭や地域の生活を主体的に創造する資質・能力を重視するとともに、生活の営みに係る見方・考え方を働かせた深い学びの実現を目指したものとなっています。また、必履修科目は、現行学習指導要領では「家庭基礎(2単位)、家庭総合(4単位)及び生活デザイン(4単位)のうち1科目を必履修」であるところが、「家庭基礎(2単位)、家庭総合(4単位)のうち1科目を必履修」と改訂されています。
 そして、改訂のポイントとしては、小・中・高の系統性を踏まえ、「家庭基礎」、「家庭総合」ともに、「家族・家庭及び福祉」、「衣食住」、「消費生活・環境」に関する内容構成となり、現行学習指導要領に引き続き、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」を加えた4つに整理されています。その上で、少子高齢化等の社会の変化や持続可能な社会の構築、食育の推進等に対応し、生涯を見通した生活設計、乳幼児や高齢者をはじめ地域社会の人々との関わり、衣食住に関わる生活文化の継承・創造、契約の重要性や消費者保護に関する内容の充実が図られています。さらに、家庭や地域及び社会における生活課題を解決する力、よりよい社会の構築に向けて、地域社会に参画し、家庭や地域の生活を主体的に創造しようとする実践的な態度を育成する指導の充実を図ることとなっています。
 次に、具体的な学習内容を整理しますと、次のようになります。
 A 人の一生と家族・家庭及び福祉
 ①生涯を見通した生活設計や生活課題に対応した意思決定
 ②家族・家庭に関する法規(家庭基礎)
 ③子育て支援についての理解や乳幼児と関わるための技能
 ④高齢者の尊厳と介護(認知症を含む)や生活支援に関する技能
 ⑤自助・共助及び公助。
 B 衣食住の生活の自立と設計(家庭基礎)、衣食住の生活の科学と文化(家庭総合)
 ①和食、和服及び和室など、日本の伝統的な生活文化の継承・創造
 ②防災などの安全や環境に配慮した住生活の工夫。
 C 持続可能な消費生活・環境
 ①「家庭基礎」における家計管理
 ②不測の事態に備えたリスク管理
 ③消費者の権利と責任と契約の重要性や消費者保護の仕組み。
 D ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動
 現行に引き続き充実
 また、科目の導入として「生涯の生活設計」の項目を新設し、上記AからCまでの内容と関連付けるとともに、まとめとしても指導することとされています。そして、現在を起点に将来を見通したり、自己や家族を起点に地域や社会への視野を広げたりできるよう指導し、さらに家庭や地域及び社会における生活の中から問題を見出して解決策を構想し、実践を評価・改善して、新たな課題の解決に向かう過程を重視した学習の充実を図ることとされています。
 2 専門教科
 専門教科「家庭」は、少子高齢化、食育の推進や専門性の高い調理師養成、価値観やライフスタイルの多様化、複雑化する消費生活等への対応などを踏まえ、生活産業を通して、地域や社会の生活の質の向上を担う職業人を育成するよう学習内容の改善・充実が図られています。科目は、現行学習指導要領の「子どもの発達と保育」及び「子ども文化」が、「保育基礎」及び「保育実践」に整理統合され、「リビングデザイン」が「住生活デザイン」と名称変更され、「総合調理実習」が新設されました。
 今回の改訂のポイントとしては、地域の子育て支援や高齢者の自立生活の支援など少子高齢化、食育の推進や専門性の高い調理師養成、価値観やライフスタイルの多様化、複雑化する消費生活、グローバル化を踏まえた生活文化の伝承・創造の4点となっています。
 その上で、学習内容は、次の5点が改善・充実のポイントとなっています。
 (1)子どもの発達や地域の子育て支援に関する学習
 保育や子育て支援について、子どもの文化を含めて保育の基礎を学ぶ「保育基礎」と、その発展として、単に子どもと触れ合うだけでなく、保育者の視点を踏まえた実習に重点を置いた「保育実践」に整理統合されています。
 (2)高齢期の衣食住生活の質の向上を図る学習
 「生活と福祉」では、人間の尊厳と自立生活支援の考え方という項目を設け、認知症への理解を深めることを明示し、高齢者への生活支援サービスの実習として、調理、被服管理、住環境の整備などの家事援助に加え、見守りや買い物が新たに追加をされています。
 (3)食育の推進や調理師養成など食に関する学習
 「フードデザイン」では、災害などの非常時を想定し、備蓄食の準備やそれを活用した調理ができるよう、災害時の食事計画についても扱うことを新たに明示し、「食文化」では、食文化と食育という項目を新設し、食文化の発展に食育が果たす役割を扱うことを明示するなど、食育の推進に関する内容の充実を図っています。そして、「総合調理実習」を新設し、調理師養成における大量調理やサービスに関する内容の充実を図っています。
 (4)ライフスタイルの多様化に伴う生活産業の発展に関する学習
 「生活産業基礎」に、ライフスタイルの変化と生活産業という項目を設け、社会の変化とライフスタイルの多様化に関する内容の充実を図っています。
 (5)生活文化の伝承・創造に関する学習
 「生活産業基礎」に、伝統産業に係る項目を新たに追加し、現状と課題や今後の展望について扱うことが明示されています。
そして、原則履修科目である「生活産業基礎」においては、職業人に求められるマネジメントの重要性に着目した指導の工夫を図ることを明示し、学習指導の改善・充実を図ることとされています。  

○家庭科教育の社会的評価を高める取組
 去る5月22日の全高長家庭部会総会並びに研究協議会におきまして、専門教育に関する家庭科調査研究委員会、普通教育に関する家庭科調査研究委員会、技術検定調査研究委員会、進路調査研究委員会の4つの調査研究委員会から平成28年度29年度の2か年にわたる調査研究の報告がなされました。
 技術検定調査研究委員会からは、「社会的評価・認知度を上げる」こととして、「上級学校や企業等への理解を深めるとともに、検定合格と進学・就職につながるよう実施校及び本部事務局において働きかける。また、家庭科技術検定の目的や意義、効果は、指導者も生徒も感じていることから、各学校で工夫して実施し、検定の魅力を発信していただきたい」との提言を受けました。この提言につきましては、前回の調査報告においても提言されたものでありました。
 また、専門教育に関する調査研究委員会は、前回調査報告に引き続き、進学にかかる詳細な調査研究に基づき、「家庭科技術検定の認知度と社会的評価を高める取組」として、「家庭科技術検定の内容やそこで身に付く知識・技能等が一見してわかるようパンフレット等をさらに工夫し、Webサイト等を活用して広く広報するとともに、あらゆる機会を通じて大学・短大等に広報し、理解と活用を求めていく必要がある」との提言とともに、「高大連携の積極的な推進」、「資格取得やコンクールの活用と情報発信」等についても提言をいただきました。
 本部会といたしましては、その提言のうち、昨年度、専門教育に関する調査研究委員会で、試行的に大学を訪問された事例をもとに、「各都道府県における大学・短大への進路要請訪問」につきまして、「各都道府県代表理事校及び理事の校長先生等を中心として、それぞれの都道府県の大学・短大に対して、家庭に関する学科で学ぶ生徒の進路希望実現のための要請活動を組織的・継続的に行っていく必要」と「家庭に関する学科設置校においても、」地元大学等に対して同様の取組を継続的に粘り強く行っていく」ことについても、より具体的な提言をいただきました。
 高大接続システム改革が進められるなかで、大学入試改革、学習指導要領改訂と急速に改革が進み、各学校における対応も求められる中、御負担をおかけすることになりますが、改革時は、その波に乗ることによって、社会的な評価を高める好機ともいえます。ぜひ、生徒の進路希望実現に資する教育活動を行うとともに、社会的評価を高める取組につきましても、御理解と御協力をお願いいたします。

 最後に、今年度開催されます大会や協議会の主管校となります校長先生方をはじめ、開催県の先生方には大変お世話になりますが、よろしくお願いいたします。家庭科教育のより一層の振興・発展のために、今後とも本部会に対する御理解を重ねてお願い申し上げます。